ふるさととっとり

第11回
水の守り手・ブナの森
2021.5.19

大山(だいせん)の豊かな森を守るブナの古木。春には光の透ける美しい広葉樹の葉を茂らせ、秋には色づく葉で人々に癒しをもたらしてくれます。《大山(だいせん)南東にそそり立つ烏ヶ山(からすがせん)直下のブナ古木》
ブナに育まれた〝水〟の宝庫
鳥取県にある大山(だいせん)は、縄文・弥生時代の昔から、森の木々を含む山そのものが神聖な存在として固く守られてきました。
奈良時代以降も山岳信仰の霊場として入山が厳しく制限された結果、手つかずのままの貴重な自然が残されています。

かつて森では広葉樹の主体としてブナの木が生い茂っていました。
20世紀の後半まで、ブナの材質は腐りやすく加工後に変型しやすい性質があることから好まれず、多くの土地で伐採が進みました。
ブナという文字に、和製漢字で「橅(ぶな)」が当てられたように、価値の少ない木として見なされてきたのです。
そうした価値観に変化が訪れたのは、20世紀も後半に入ってからのこと。
ブナは大地にしっかりと根を張り山崩れなどの水害を防ぐほか、保水力が高く豊かな森の水源を守る源であると知られるようになりました。
ブナの守る豊かな土壌が様々な生物を育み、たっぷり栄養素を含んだ水が川や海へ流れ込むことにより、大山の麓の里を潤しています。
大山には樹齢200年を越えるブナの古木たちとともに、西日本最大級のブナの森が広がっています。
5月になると新緑に染まる美しい広葉樹の森が、命の源でもある水を守り続けてくれているのです。